Category : 懐かしいあの歌をもう一度

俺たちの旅は、ただお前がいい

それまでの青春ドラマの設定は「高校」が定番。主役は先生で、不良の生徒たちとともに青春を謳歌し、悩みをさわやかに解決していました。「俺たちの旅」は大学生と社会人の物語。先生がいません。指針となるものがなくなったとき、人は自分の頭で考えざるを得ない、ということを指し示した作品とも言えるでしょう。

60年代に全共闘世代が大暴れした後、70年代の十代の者たちは道に迷うことになります。先輩たちから、「若者は暴れていれば良い」と教えられていたのに、自分たちが高校生になってみたら暴れる対象がもはやなくなっていました。昨日まで長髪にヘルメットをかぶって火炎瓶を投げつけていた先輩は、髪を短くカットして上司に言われるがまま、型にはまって堅苦しく仕事をしています。

社会の矛盾を熱く語った人達が、実は矛盾がなんだかよくわかっていなかった、ということも明らかになります。「結局、社会は変わらないのか」という絶望感、「思想に燃えた人たちのなれの果てはただのサラリーマン」という現実。最後まで自由と平等を追いかけたはずの連中は、山にこもって内ゲバの殺し合い。先輩たちの真似をしても夢は追えない、ということだけがわかりました。

行き先を見失った若者に、方向を指し示していたのが「青春ドラマ」。情熱や友情を高らかに訴えました。そのうち、十代の若者だけでなく大学生や社会人も迷うことになります。「生き方がわからない」と。

迷いを抱えた社会を背景に、登場したドラマが「俺たちの旅」。中村雅俊演ずる大学4年生「カースケ」は自由を求めて生き続けようとします。周りは「未来に迷う」仲間たち。彼らを巻き込んですったもんだの騒動が起こりますが、結局はいつも答えが見つからない、というストーリー。それでも、主題歌を聴くと今でも涙を流すおじさんがいます。曖昧さこそが青春の核なのかも知れません。

東大卒の異色歌手が作った歌

東大を卒業した銀行員がフォーク歌手となったということで、有名になった小椋佳。歌詞の言葉遣いが洗練されており内容的にもシュールで、インテリの間でも人気となりました。1975年には布施明に提供した「シクラメンのかほり」がレコード大賞を受賞しますが、この年に、「俺たちの旅」の放送も開始します。

この曲の歌詞は、「夢」の中での風景を漠然と語っており意味不明です。メロディの気だるさとの相乗効果で、全体として「なんとなく」感動的な歌となっています。ドラマ自体の曖昧さとも共通する点です。挿入歌の「ただお前がいい」にも同様のことが言えます。友情について語ってはいますが、「お前がいい」理由は説明してはいません。

「俺たちの旅」は何が良いのか説明できないタイプのドラマであり音楽です。それでも、今でも胸を熱くさせるものがあります。曲を聴いて、何が良かったのか考えてみませんか?

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