Category : 勧善懲悪を学んだ時代劇と刑事もの

時代劇っぽくない明るさが魅力の「三匹が斬る!」

多くの時代劇に出演する大スターのひとり、高橋英樹。「桃太郎侍」「遠山の金さん」など当たり役は多数ありますが、彼の主演作でも異色作と呼べるのが「三匹が斬る!」です。  高橋英樹演じる矢坂平四郎(通称・殿様)と、役所広司演じる久慈慎之介(通称・千石)、そして春風亭小朝演じる燕陣内(通称・たこ)。この3人はそれぞれ別の目的を持ち、バラバラに旅をしているものの、偶然落ち合った先では大抵なにか事件が起こります。

基本的には「水戸黄門」のように、全国を旅しながらの勧善懲悪ものなのですが、最大の特徴は作品全体に流れる「今っぽさ」と「明るさ」でした。

若者でも楽しめた明るい時代劇

千石は、そのあだ名の通り「いつか千石の俸禄で大名に召し抱えられる」ことを夢見て旅を続ける素浪人。たこは行く先々で奇妙な商売を企てる浪人ですが、高橋演じる殿様だけは、目的が不明です。あだ名の「殿様」も、なにか殿様っぽいということから名付けられており、千石、たこからは「どこかの大名の次男坊あたりじゃねえか」と疑われますが、殿様はこれを否定も肯定もしません。しかしながら、どことなく感じさせる器の大きさと強い正義感で、三人の中ではリーダーのような存在になっていきます。

ちなみに、千石は薩摩藩出身の荒々しいサムライという設定で、たこは正義感より商売っ気が優先といったコメディ担当。三人三様の性格でありながら、付かず離れずの旅をするという設定が、不思議とバランスよく見えました。

作品の特徴である「今っぽさ」は、あえて時代劇風の言葉使いを避け、現代風のセリフ回しやダジャレを盛り込むといった演出によるもので、作品全体としても他の時代劇とは比べ物にならないほど明るい印象がありました。こうした演出から、当時は若者でも視聴できる時代劇ともなっており、今のアラフィフ世代にとっても「初めて見た時代劇だ」という人も多いのではないでしょうか。

ぶっきらぼうな言葉使いの千石、ほぼ現代語でまくし立てるたこ、そしてそうした脱・時代劇風な作風な中で、どちらかと言えば旧態依然な「時代劇風」演技をする(とはいえ「桃太郎侍」などとは比べ物にならないほど砕けていましたが)殿様という、キャラの見せ方にも特徴がありました。古めのセリフ回しや見栄の切り方が、殿様の「器の大きさ」や「大物感」を出す演出となっており、それがまた時代劇というジャンルそのものへの風刺のようにも映ったのです。

最後は王道の大立ち回り!

この3人の奇妙な旅は人気を呼び、放送は第7シリーズまで、足掛け8年も続く人気作となりました。ただし、第6シリーズでは千石が、第7シリーズでは殿様が、それぞれ演者の都合により出演しておらず、その穴を埋めたのが「若殿」とこ吉良右近。演じたのは、なんと近藤真彦です。かつてはたのきんトリオとして大人気アイドルだった近藤の、初の本格的時代劇出演作ともなっています。こうしたキャスティングの妙もまた、時代劇らしからぬ本作ならではといえるかもしれません。

いろいろと異色な時代劇として話題になった本作ですが、従来通りに外さないポイントもあり、それが毎回ラストに勃発する勧善懲悪の大立ち回りです。このシーンでは、高橋秀樹の貫禄溢れる殺陣、役所広司の荒々しい立ち回り、そして両穂先の仕込み槍を駆使する小朝のアクションを堪能することができました。肝心なところでは奇をてらわず王道を貫いたからこそ、人気シリーズとなったのです。

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