Category : トレンディドラマが火をつけた恋

略奪愛が思い出に変わるまで

80年代後半以降、お茶の間にどぎついテーマが許されるようになります。かつては、ドロドロとした愛憎劇は「昼メロ」向きで、夜の時間帯にはあまり登場しませんでしたが、バブル経済の影響で、お金にゆとりのある人たちが強い刺激を求めるようになりました。どんなものでもお金で手に入る時代。人の心も買えると本気で考える人が急増します。

何でも自由になる世の中だけに、手に入らないもの、手に入れられるはずのないものを欲しがってしまう。「思い出に変わるまで」は、そんな社会心理を背景にしたドラマではないでしょうか。

既に男は弱くなっていた!?

80年代を通して言えることは、ドラマに登場する男がどんどん弱くなって行くことです。70年代には、「俺は男だ」と男性誇示のドラマが人気を博していました。「ウーマンリブ」などの影響で女性の社会的地位が向上する中、「男は男らしく」と訴えざるを得ない時代だったとも見ることができます。

70年代の後半には、「俺たちの旅」のように男たちは迷い始めます。どこに向かっていいのかわからない。それでも何とか自分らしさを保つために、自力で人生を切り拓こうと努めます。

80年代に入ると、どのドラマでも男性は決断力がなくなります。恋愛に関してもどっちつかずで、「愛しているのに愛していると伝えられない」がために、物語が泥沼化する。「ふぞろいの林檎たち」のように、何をやってもうまくいかない。一方で女子は元気です。「金曜日の妻たちへ」で主婦は皆不倫に積極的になり、中山美穂の「夏・体験物語」「毎度お騒がせします」では、女子中高生がどんどん性的な積極性を増していきます。

男性はどんどん前向きさを失い、女性はどんどん強くなる。現代の「草食系男子」に通ずる傾向はすでに80年代から始まっていました。

妹が姉の恋人を奪う

「思い出に変わるまで」は、松下由樹演ずる妹が、今井美樹演ずる姉の恋人・石田純一を略奪し結婚してしまう物語。しかも、妹が姉に向かって「とらないで!」と宣言する激しさ。このような「不実」は必ず破綻するのがそれまでの定石。当然最後のオチは、「石田純一が今井美樹のところにもどるはず」と誰もが思いました。ところがそうはなりません。

奪い取りっぱなし。「盗んだものの勝ち」という展開は、社会の価値観の変化を如実に表していたのかも知れません。その後の「ライブドア」事件のように、「金をもうけた者が勝ち」という考え方にもつながったと言えるのではないでしょうか。

主題歌はダイアナ・ロスの「イフ・ウィ・ホールド・オン・トゥゲザー」。アメリカではアニメの主題歌でした。歌詞の内容は、愛と希望をテーマに「力を合わせれば夢は叶う」と歌っています。ドラマの内容のドロドロさとはかけ離れていますが、今井美樹の美しさや誠実さにはマッチしていたのかも知れません。 ドロドロな愛の物語を観て、愛の本質とは何かを考えてみませんか?

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